第七日目(最終日)

最終日は100kg超級の上川大樹選手と78kg超級の杉本美香選手が出場しました。

100kg超級はシード選手8人の中から準決勝進出者が全てでているので順当な勝ち上がりだったと言えるでしょう。上川選手(ランキング12位)は1回戦カスティロ(グアテマラ)選手と当たり払腰で一本勝ち。2回戦はランキング18位のマカラウ(ベラルーシ)選手との対戦となりましたが、中盤に19秒間抑え込まれて有効を取られそのまま逆転できずに試合終了。敗者復活戦にはいけませんでした。

78kg超級はまた地元イギリスのブライアント選手が大健闘し、銅メダルを獲得。不沈艦と言われていたトン(中国)選手が準決勝で敗れるといった波乱がありました。杉本選手(ランキング4位)は2回戦からの出場で、気合の乗ったいい試合でトントンと一本勝ちを重ねて準決勝進出。準決勝も勢いに乗る前述のブライアント選手を手堅く破り、決勝戦へ。決勝はトン選手を破ったランキング7位のオルティスキューバ)選手との対戦でした。お互い決め手がなく試合は進行しましたが、杉本選手に指導1が与えられてゴールデンスコアに突入。しかし杉本選手は慎重になったのか試合のペースはそのままタイムアップ。判定3−0で敗れました。銀メダル獲得です。

今大会、男子はロシアが目覚しい躍進。金メダル3個を獲得しました。女子は金メダル7個が全て違う国が獲得しました。メダルがたくさんの国に散らばるということは、柔道がオリンピック種目であることを維持するためには大きなプラス要因になっていると思います。柔道の国際化が言われて久しいですが、外国人選手同士の試合も非常にスリリングで見ごたえのある試合が多かったように思います。強化の面ではこれからも非常に厳しい戦いを強いられていくのでしょうが、審判の問題はあったものの競技としての柔道は繚乱期に入ったのではないかと思いました。

以下入賞者です。

女子78kg超級
金:オルティスキューバ
銀:杉本(日本)
銅:トン(中国)、ブライアント(イギリス)

男子100kg超級
金:リネール(フランス)
銀:ミハイリン(ロシア)
銅:シルバ(ブラジル)、トルツァー(ドイツ)

第六日目

六日目は100kg級の穴井隆将選手と78kg級の緒方亜香里選手が出場しました。

78kg級は地元イギリスのギボンズ選手がランキング外から2位になる大波乱を演じました。その他はランキング上位3名が順当に準決勝へ進出。そのイギリスのギボンズ選手のパートが緒方選手が勝ち上がるべきところのCパートでした。緒方選手は1回戦ランキング12位のチョン(韓国)選手を指導2で退け、2回戦ランキング10位のフェルケルク(オランダ)選手との対戦となりましたが、試合終了20秒前に逆転の技有を奪われ敗戦。敗者復活戦にも進めませんでした。

100kg級はランキング1位のラコフ(カザフスタン)選手がランキング30位のガシモフ(アゼルバイジャン)選手に1回戦で敗れたり、ランキング8位のゼービ(イスラエル)選手がランキング18位のペテルス(ドイツ)(選手)に、これも1回戦で敗れるという波乱がありました。穴井選手は1回戦オースチン(イギリス)選手を指導3で退け、2回戦はランキング11位のクルパレク(チェコ)選手との対戦となりました。中盤、穴井選手はクルパレク選手にあっさりと抑え込まれて一本負け。敗者復活戦の権利もありません。

初日からこれまではゴールデンスコアが多く、総じてつまらない試合が多かったのに対して今日の試合は選手同士のポイントの奪い合いになる試合が多く、面白い試合が続きました。しかし日本選手が早々と破れてしまったのが残念でした。また、会場にロシアのプーチン大統領が観戦に来ており、その前でロシアのカイブラエフ選手が見事な背負投で北京オリンピック金メダルのナイダン(モンゴル)選手を投げて一本勝ち。劇的な優勝を飾りました。プーチン大統領上着を脱いだワイシャツ姿で両手を上げて喜んでいるのが大変印象的でした。

以下入賞者です。

女子78kg級
金:ハリソン(アメリカ)
銀:ギボンズ(イギリス)
銅:アギアル(ブラジル)、チュメオ(フランス)

男子100kg級
金:カイブラエフ(ロシア)
銀:ナイダン(モンゴル)
銅:ペーテルス(ドイツ)、グロル(オランダ)

第五日目

五日目は90kg級の西山将士選手と70kg級の田知本遥選手が出場しました。

70kg級はランキング24位のティエレ選手(ドイツ)がランキング2位のボッシュ選手(オランダ)を破って決勝に上がる波乱がありました。田知本選手(ランキング3位)は2回戦ランキング13位のコルテス(キューバ)選手を破り3回戦でランキング7位のチェン(中国)選手との対戦となりました。田知本選手は得意技の大外刈で有効を二つ取り、危なげ無く勝ち上がるかに見えましたが、寝技でチェン選手の関節技を受けた際に左肘を痛めてから防戦一方となりました。奥襟をどんどん取ってくるチェン選手が有効二つを取り返し、勝負はゴールデンスコアにもつれ込みました。延長戦でもチェン選手のペースで試合は進み判定の旗はチェン選手に3本揃いました。田知本選手は敗者復活戦へ。

敗者復活戦ではボッシュ選手との対戦。痛めた左腕はテーピングした様子が見て取れます。序盤はいつもと変わらないような動きが出来ていましたが、やはり左腕の影響なのか徐々にボッシュ選手に攻め込まれる状況となり、指導2で敗れました。負傷の詳細はわかりませんが怪我をせず戦えていたら、と思ってしまいます。やはりこれがオリンピックという大舞台なのでしょう。何があるかわかりません。

90kg級の西山選手(ランキング3位)は1回戦でランキング27位のマメドフ(キルギスタン)選手、2回戦でランキング25位のボラト(カザフスタン)選手を破り三回戦へ。ランキング17位のソン(韓国)選手との対戦は中盤にソン選手の背負投で技有と有効のポイント二つを立て続けに取られリードされました。それでも西山選手の表情からは焦った様子は見られず、いつでも投げることができるというような気迫が感じられました。試合時間残り30秒、西山選手の大外刈が見事に掛かり、主審は一本の判定でしたが、両副審は技有のゼスチャーで技有に訂正されました。この技の判定は微妙でしたが、一本でも良かったのではないかと思います。西山選手は最後まで攻め立てましたが一歩及ばず。敗者復活戦に回ることとなりました。

敗者復活戦ではランキング5位のチョリエフ(ウズベキスタン)選手をゴールデンスコアの旗判定3−0で下し三位決定戦に進みました。対戦相手はランキング1位のイリアディス選手を破ったランキング12位のデニソフ(ロシア)選手です。ゴールデンスコアになって両者疲れが見えていましたが、最後まで前に出て攻撃する姿勢を見せていた西山選手に判定の旗は3本上がりました。見ている方が消耗してしまうような試合でしたが西山選手が銅メダルを獲得。おめでとうございます。

今大会、これまでの国際大会での一本の基準よりも非常に条件が厳しいように感じます。それについてはここでは詳しくは述べませんが、選手たちは大いに戸惑っている様子。二日目の判定が覆ったことも含めて大きな問題が残る大会であると思います。今日、六日目の審判はどうなのかも興味のあるところです。

以下入賞者です。

女子70kg級
金:デコス(フランス)
銀:ティエレ(ドイツ)
銅:アルベール(コロンビア)、ボッシュ(オランダ)

男子90kg級
金:ソン(韓国)
銀:ゴンザレス(キューバ
銅:西山(日本)、イリアディス(ギリシャ

第四日目

四日目は81kg級の中井貴裕選手と63kg級の上野順恵選手が出場しました。

63kg級の上野選手(ランキング1位)は予選ラウンドでは、1回戦ランキング88位のチャウダリー(インド)選手、2回戦はランニング16位のミスコビッチ選手を破り、3回戦はランキング11位のJOUNG(韓国)選手との対戦となりました。試合は最初から最後まで終始JOUNG選手のペースを崩せずに進みました。途中指導を一つと有効一つを取られましたが、内容的には完敗でした。上野選手は敗者復活戦に回ることとなりました。この階級はシード選手8人が全員ベスト8に進出しており順当な勝ち上がりでした。

敗者復活戦はランキング7位のビルボーズ(オランダ)選手を破り、三位決定戦へ。ランキング10位のテデヴスレン(モンゴル)選手との対戦となりましたが、終始攻めた上野選手が指導2つ取って勝利。三回戦で敗戦後よく立てなおしての銅メダルは価値があると思います。

81kg級の中井(ランキング5位)選手は、2回戦でランキング72位のムニョンガ(ザンビア)選手、3回戦でランキング11位のトマ(モルドバ)選手を破り、3回戦でランキング4位のビショフ(ドイツ)選手との対戦となった。ビショフ選手は前回北京オリンピックの金メダリスト。中井選手は終始強気に前に出て攻めましたが、体落を掛けたところでビショフ選手に腕挫十字固に極められて「参った」の合図。敗者復活戦に回ることとなりました。

敗者復活戦ではランキング1位のギルヘイロ(ブラジル)選手との対戦となりましたが、前へ出る強気な攻めを貫いて優勢勝ち。三位決定戦ではランキング7位のニフォントフ(ロシア)選手との対戦となりました。これまでと同様に中井選手は先手を取って攻めますが、ニフォントフ選手はよく見て返し技で応酬。同じような返し技で技あり二つ取られ、合せ技一本となりました。中井選手は善戦しましたがメダルには手が届かず5位となりました。

以下入賞者です。

男子81kg級
金:キム(韓国)
銀:ビショフ(ドイツ)
銅:ニフォントフ(ロシア)、バロ(カナダ)

女子63kg級
金:ゾルニール(スロベニア
銀:シュウ(中国)
銅:上野(日本)、エマヌ(フランス)

第三日目

三日目は73kg級の中矢力選手と57kgの松本薫選手が出場しました。

57kg級の松本選手(ランキング1位)は予選ラウンドで1回戦ランキング47位のドゥキッチ(スロベニア)選手、2回戦ランキング12位のガシモヴァ(アゼルバイジャン)選手、3回戦ランキング10位のキンタヴァレ(イタリア)選手を破り決勝ラウンドへ順調に進みました。

準決勝ではランキング5位のパヴィア(フランス)選手と当たった。パヴィア選手の柔道スタイルが場外際まで下がり、場外に向かって逃げるように片手しか持たずに内股を掛けるという非常にやりにくいスタイル。ゴールデンスコアまでもつれたが、場外際で組みながらの大外刈で有効を取り決勝へ。

勝戦は昨年の世界選手権で3位のランキング7位のカプリオリウ(ルーマニア)選手との対戦となりました。松本の投げ技がポイントとなりそうな惜しい場面はありましたが、ゴールデンスコアに。松本選手が強引に払腰に掛けた時に、カプリオリウ選手は松本選手の軸足を内側から刈るという反則負けになる行為をしてしまいました。直ちに試合はストップし、審判団が事実確認後カプリオリウ選手に反則負けが告げられ松本選手に勝ちの宣告がされました。日本選手団にとっては待望の金メダルです。松本選手の挑みかかるような鋭い眼光と前屈みの柔道スタイルが印象的でした。

技を掛けている相手の軸足を内側から刈ってはいけないという反則事項を知らない観衆がたくさんいたようです。今回の大会は審判の判定が覆される事が非常に多いので、どうなったのか説明のアナウンスがあってもいいのかなと思いました。さらなる柔道の普及を考えているのであれば、大相撲やプロ野球のように観客に対する配慮を考えてもいい時期にきていると思います。

73kg級の中矢選手(ランキング2位)は順当に予選ラウンドを勝ち上がり準決勝戦へ。準決勝ではランキング3位のエルモント(オランダ)選手破り決勝戦へ。決勝はランキング1位のワン・キチュン(韓国)を破ったランキング5位のイサエフ(ロシア)選手との対戦になりました。開始早々中矢選手の仕掛けた背負投からイサエフ選手は十字固へ移行して中矢選手を攻め立てます。がっちりと決まったかに見え万事窮すかと思われましたが中矢選手よくこらえました。終盤にイサエフ選手の払巻込で中矢選手は横倒しになりそれが有効となりました。そしてタイムアップ。惜しくも銀メダル。中盤に中矢選手が抑え込みそうになる場面もあり、いい試合だったと思います。

以下入賞者です。

女子57kg級
金:松本(日本)
銀:カプリオリウ(ルーマニア
銅:モロイ(アメリカ)、パヴィア(フランス)

男子73kg級
金:イサエフ(ロシア)
銀:中矢(日本)
銅:サインジャガル(モンゴル)、レグラン(フランス)

第二日目

二日目は66kg級の海老沼匡選手と52kg級の中村美里選手が出場しました。

52kg級の中村選手は初戦が2回戦から相手は前回北京オリンピックでは銀メダルのアン・クムエ(北朝鮮)選手でした。
開始早々中村選手が不用意に掛けた技を返され、それが技有となり挽回できずに試合終了。敗者復活戦にも回れずに敗退しました。
この階級はシード選手8名のうち7名が上位に残れず敗退。波乱の階級となりました。

66kg級の海老沼選手は順当に勝ち上がりましたが、準々決勝でランキング6位のチョ・ジュンホ(韓国)と当たりました。試合はゴールデンスコアでも勝負がつかず、旗判定になりました。そこで一度はチョ選手に旗が3本揃いましたが判定のやり直しで海老沼選手の勝ちになりました。結果的に勝ちましたがこの試合はすっきりしない後味が悪い試合でした。海老沼選手は準決勝にコマを進め、シャヴダチュアシビリ(グルジア)との対戦になりました。シャヴダチュアシビリ選手は海老沼選手を引きつけながら終始積極的に試合を進め、海老沼選手の頭が下がったところを隅返しで一本。海老沼選手はこの試合に関してはいいところがなく終わってしまいました。三位決定戦ではランキング40位台のザグロドニク(ポーランド)選手との対戦。お互いに技有を取り合い決着がつかずゴールデンスコアへ。海老沼選手は豪快な大腰で一本勝ちを決めました。銅メダル獲得。準々決勝で判定が覆り海老沼に敗戦したチョ・ジュンホ選手もしぶとく勝ち上がり銅メダル。こちらも讃えたいと思います。また準々決勝の試合は結果的に海老沼選手が勝ちましたが非常に後味が悪い試合となりました。これは選手の問題ではなく審判のコントロールシステムの問題だと思います。IJFは大きな問題を抱えました。

以下入賞者です。

男子66kg級
金:シャウダチュアシビリ(グルジア
銀:ウングバリ(ハンガリー
銅:海老沼(日本)、チョ(韓国)

女子52kg級
金:アン(北朝鮮
銀:ベルモイ(キューバ
銅:フォルチニティ(イタリア)、ネト(フランス)

ロビー展示品

会場風景

大会第一日目

いよいよロンドンオリンピック柔道競技が始まりました。
男女共に1階級づつ7日間にわたって競技が行われます。
競技会場は2試合場が設置されており外側が赤、内側が黄の配色です。

今日は男子60kg級の平岡拓晃選手と、女子48kg級の福見友子選手が出場しました。
両選手共に午前に行われた予選ラウンドは順当に勝ち上がり、準決勝にコマを進めました。

男子はランキング1位のソビロフ(ウズベキスタン)、4位のガルスチャン(ロシア)は順当に勝ち上がり、
16位のヴェルデ(イタリア)は2回戦でランキング3位のザンタライア(ウクライナ)をしぶとい粘り強い
柔道で破り準決勝進出を果たしました。

女子はランキング4位で北京オリンピック金メダリストのドミトル(ルーマニア)とランキング2位のメネゼス(ブラジル)、
ランキング3位のファンスニック(ベルギー)が順当に勝ち上がり準決勝進出。

一時間弱の休憩、観客の入れ替え後、現地時間の1400から決勝ラウンドが開始されました。
決勝ラウンドは敗者復活最終戦、準決勝戦、三位決定戦、決勝戦が行われます。

福見選手の準決勝はドミトル選手とでしたが、福見選手の少し遠間から仕掛けた大外刈をうまく返されてそれが技ありとなり、
必死に追いかけましたがドミトルの守りは固く無念の敗戦となりました。三位決定戦に回ることになります。

福見選手の三位決定戦ではランキング6位のチェルノヴィツキ(ハンガリー)との対戦になりました。
ケンカ四つでチェルノヴィツキ選手の釣手が上から被さるようになってきて、それを福見選手は捌きにくそうに試合を進めて
いましたが、チェルノの小外刈の足が掛かったときに下がり気味に脚を上げて受けるとそのままバランスを崩して倒れ一本になりました。結果は5位です。

平岡選手は準決勝のザンタライア戦は開始早々の非常にキレの良い小内巻込で一本勝ち。決勝戦に向けていい勝ち上がり方をしました。
反対パートからはランキング1位で昨年のパリ、一昨年の東京と世界選手権を連覇しているソビロフにガルスチャンが粘り勝ち決勝に上がってきました。
勝戦では開始すぐにガルスチャンの内股を受け切った平岡が掬い投げに移行して返そうとしました。ガルスチャンはそこを狙っていたかのように払巻込を仕掛け、平岡の身体は一回転。審判の判定は最初は技ありと宣告されましたが、一本に訂正され試合終了。あっけない幕切れではありましたが、様々なプレッシャーの中での平岡選手の銀メダルは立派です。


以下入賞者です。

男子60kg級
金:ガルスチャン(ロシア)
銀:平岡(日本)
銅:キタダイ(ブラジル)、ソビロフ(ウズベキスタン

女子60kg級
金:メネゼス(ブラジル)
銀:ドミトル(ルーマニア
銅:ファンスニック(ベルギー)、チェルノヴィツキ(ハンガリー